糖尿病網膜症について

糖尿病網膜症とは

糖尿病によって網膜(白目の内側の壁に張り付いている膜状の組織。神経の細胞があり、カメラにたとえるとフィルムや画像素子に該当)の血管が傷んでしまう病気です。日本人の中途失明原因として緑内障に次いで2番目に多く、19%を占めます。
一般的に、糖尿病に罹患後5~15年で発症することが多いのですが、糖尿病の治療状況によっては発症時期に個人差があります。

主な症状

  • 視力低下
  • 歪視(物がゆがんでみえる)など

重症になると飛蚊症を生じることもあります。また、網膜の出血、異常な血管の発生、硝子体出血(目の中に血液が流出して溜まってしまう状態)、網膜剥離などが起こる場合もあります。それらによって、病気の重症度が以下のように分類されています。

重症度分類

①単純網膜症 ①から②までは自覚症状がまったく無いことが多い。
②増殖前網膜症
③増殖網膜症 ③に至って急激に視力低下を自覚することもあります。

また、重症化して牽引性(けんいんせい)網膜剥離や特殊なタイプの緑内障を合併した場合には、失明する可能性もあります。

さらに…

糖尿病網膜症の合併症として「糖尿病黄斑浮腫」があります。黄斑(おうはん)とは網膜の中心部分を指し、視力にとって最も重要な場所です。
黄斑浮腫とは、黄斑に病気の血管から漏れ出した血液の成分が溜まってむくんでいる状態です。重症度分類の①~③、いずれの時期にも発症し、治療の開始時期が遅れると視力低下の原因になります。糖尿病と診断されている方は眼科での定期的な検査を受けることが大切です。
※糖尿病黄斑浮腫は、糖尿病網膜症の患者さまの視力低下の原因として最も多いといわれています。

正常な眼底写真

正常な眼底写真

増殖網膜症の眼底写真:新生血管と硝子体出血

  • 増殖網膜症の眼底写真:新生血管と硝子体出血
  • 増殖網膜症の眼底写真:新生血管と硝子体出血

糖尿病黄斑浮腫の眼底写真とOCT画像

  • 糖尿病黄斑浮腫の眼底写真とOCT画像
  • 糖尿病黄斑浮腫の眼底写真とOCT画像

治療について

治療法には、薬による治療と外科的な治療があり、病気の進行度や状態によって治療法を決めます。早期に治療を開始するほど少ない負担で視力障害を防ぐことができます。
とにかく大切なのは、糖尿病と診断されたら定期的に眼科を受診して精密眼底検査(網膜の状態を詳しく見る検査)を受けることです。瞳孔を拡げる目薬をして検査をすると、より詳細に調べることができます。
※目薬の効果が継続する数時間はまぶしくて見えにくい状況になりますので、検査後には車の運転を控える必要があります。

  • 単純網膜症の治療
血糖コントロール、血圧コントロール、血管を丈夫にする薬による網膜出血の抑制を行います。
  • 増殖前網膜症の治療
レーザー光凝固療法
  • 増殖網膜症の治療
レーザー光凝固療法に加えて、硝子体手術が必要になることがあります。
  • 糖尿病黄斑浮腫の治療
  • VEGF阻害薬という薬剤を眼内に注射する治療を実施します。VEGF 阻害薬は血管から血液の成分が漏れ出すのを抑える効果があります。

眼底検査により異常が確認された場合の検査

FAG(蛍光眼底造影検査)

網膜の血管の「詰まり」や「漏れ」などの異常の範囲や程度を調べる検査です。
造影剤という薬剤を腕の血管から注入した後で7分程度かけて網膜の写真を撮影。病気の重症度の分類や治療方針の決定に役立てます。
また、レーザー治療をする際には必要な範囲を正確に知ることができます。

※FAG(蛍光眼底造影検査):白く滲んだ部位から造影剤が漏れています

OCT(光干渉断層計)

黄斑浮腫や網膜剥離の状態を確認できます。

眼の構造

眼の構造

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